第1話 北海道で馬車のケーキ屋さん
「ロバのパン」を知っていますか? ロバのおじさんチンカラリ〜ン、という歌声と共にロバに引かれてやってくる屋台のパン屋さんです。聞くところによると、昭和30年代の全盛期には全国に180店、いまは約10店がクルマや自転車で移動販売を続けているそうです。
わたしは、「ロバのパン」が大好きでした。蒸しパンの味もさることながら、ロバに会えることが何よりも楽しみだったのです。幼い頃のこの体験がもとになり、私は大の馬好きになり(幼いときはロバと馬の区別がなかったようで、ロバはいつしか馬に変換されたようです)、周囲に反対されながらも北海道の大学に進学して酪農を学んだのでした。
東京にもどってからはパティシエの修行をし、シェフ(当時は修行中)と出会って結婚、一緒にビストロを営むようになりました。そんなとき、縁があって4頭の馬の世話をすることになりました。夢が叶った思いでした。しかし、厩舎は神奈川県の厚木。最愛のあかりちゃんを始めとする4頭に毎日会うことはできません。もっと近くで、というよりも、馬たちと一緒に暮らす生活がしたい。そんな思いが募る毎日です。
大学を卒業したときに、北海道に住みつこうとしたのですが、いろいろあって東京に戻りました。いつかは北海道、の思いは気持ちのどこかにいつもあります。でも、東京のル ゴロワをご贔屓にしてくださるお客さまのことを思えば、そう簡単に事を運ぶわけにはいきません。
でも、でもでも、はたして、いったい、いつかって、いつだろう? 5年後? 10年後? 私の夢は曖昧でした。
曖昧なことと曖昧につきあっていては埒が明かない! そんなふうに頭の回路が切り替わるきっかけがあり、「いつか」という曖昧さが私の中できれいさっぱり払拭されたのは今年の夏。もう、いつでもいいんだ、いまやりたいことに、いま取り組まなくちゃ!
私が叶えようとしている夢は、4頭の馬たちと一緒に北海道に移り住むこと。
牧場とル ゴロワが同じ場所にあって一つになっている。そして、あかりちゃんが引く馬車にル ゴロワのケーキを積んで出かけます。かつての私がそうだったように、馬車のケーキ屋さんが好きになってくれる子どもに出会えるかも。
そんな夢に、私はいま、元気いっぱい取り組もうとしています。
第3話 私の夢・あこがれ・尊敬する北海道
第2話 二つのル ゴロワ
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